恵比寿の地下飲食街が“クィアな展示空間”に。台湾の写真家マンボウ・キーによる特別展示が開催へ

東京・恵比寿に残るノスタルジックな飲食街「恵比寿 地下 味の飲食街」を舞台に、台湾を拠点に活動するフォトグラファー/アーティスト、マンボウ・キーによる特別展示「Under A Void|空隙之下」が開催される。会期は2026年2月6日(金)から2月23日(月・祝)まで。

本展は、恵比寿映像祭2026「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」の地域連携プログラムの一環として実施されるもの。居酒屋やスナックが連なり、昭和の大衆酒場文化を色濃く残す地下通路そのものを“都市の展示空間”と捉えた、サイトスペシフィックな試みとなる。

マンボウ・キーはこれまで、台湾のクィア・コミュニティやアンダーグラウンド・カルチャーを起点に、写真・映像・音楽・インスタレーションを横断しながら作品を発表してきた作家だ。今回の展示では、2019年以降に制作された作品群の中から、クィア・コミュニティにおいて相互扶助や連帯を育んできたドラァグクイーンやパフォーマンス・アーティストたちに焦点を当てた作品が紹介される。

展示には、『ル・ポールのドラァグ・レース』で注目を集めたNymphiaや、台湾の短編映画でドラァグ・カルチャーを体現したMarianなども登場。地下という匿名性を孕んだ空間のなかで、多様な身体や声が交錯し、恵比寿映像祭のテーマである「多声性」とも響き合う構成となっている。

「空隙(ヴォイド)」としての地下空間

展覧会タイトル「Under A Void|空隙之下」は、マンボウ・キーが2021年に発表し、台新芸術賞にも選出された《Avoid A Void(碧兒不談)》に由来する。これは、彼が初めてクィアの集合的イメージを公的空間で提示した作品でもある。

作家自身は、昭和から残る地下の飲食・娯楽施設を巡るなかで、「特定の歴史的瞬間に凍結された記憶が保存されているかのような感覚」を覚えたという。そこには、かつて台湾社会が抱いていたジェンダー平等や婚姻平等への希求とも重なる、内面的な自由の感覚が宿っていると語る。

昼間の役割や名前を一度手放し、地下へと降りていく人々。誰でもなくなり、ただその場に身を委ねる――マンボウ・キーは、そうした状態を「空隙(ヴォイド)」として捉え、失われつつある記憶やクィアな時間を、作品としてすくい上げている。

台湾のクィア・カルチャーと、日本の地下飲食街という異なる文脈が交差する本展。作品と空間、そして鑑賞者自身の身体感覚が重なり合う体験は、クィアであること、名づけられない存在であることを、あらためて問い直す場となりそうだ。

Manbo Key(マンボウ・キー)/台湾・台北を拠点に活動するアーティスト。写真、映像、音楽、インスタレーションを用い、家族の記憶やアイデンティティ、クィア・カルチャーを主題に制作を行う。父親が遺したホームビデオを起点とした映像三部作《Father’s Videotapes》《Avoid A Void(碧兒不談)》《Diverse: Identity》で注目を集め、2019年に台北美術賞最優秀賞を受賞。近年はトランスジェンダーや周縁化されたアイデンティティ、パーティ・カルチャーとの関係性にも関心を広げ、国際的に作品を発表している。

Under A Void|空隙之下/Manbo Key
会期|2026年2月6日(金)~2月23日(月・祝)24時間営業(休日なし)
会場|恵比寿 地下 味の飲食街(東京都渋谷区恵比寿南 2-3-3 第一恵比寿マンション B1F)
料金|無料

記事制作/newTOKYO

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