映画ライターのよしひろまさみちが、今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム「まくのうちぃシネマ」。
8本目となる今回ご紹介するのは人生の教科書とも言える作品。今年はこんなだから、6月のプライドマンスもお静か。いや、それどころじゃないわよ、って話なんですが、それでもLGBTQの皆さんは6月=プライドマンスということを忘れちゃいけないわよ。ということで、今回は名作『パレードへようこそ』。
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80年代イギリス、LGBTQの人権活動団体が、まさかの炭鉱労働者の皆さんと共闘したという実話をもとにした本作。いや〜、めちゃくちゃ感動よ。だって、性的マイノリティの人権を求める活動家が、マッチョで閉塞的な炭鉱労働者の皆さんと手を取り合うなんて、夢のようなお話。そこにはちゃんと共通の目的があって、政治を変えない限り、平等に扱われないというスローガン。もちろん一筋縄にはいかない物語だけど、ラストは感動をお約束。
これね、コロナ禍の今観ると、改めて考えさせられるのよね。ほら、世界同時にコロナ禍でおかしなことになっちゃったじゃない。でも、社会生活を守るために一番必要なことって何かを理解するには必要なことだったと思うの。それは「人の声に耳を傾け、協力しあうこと」よ。ぶっちゃけ、昨年までって、SNSしかり「自分が、自分が!」っていう我を押し通すことが価値観になっていた節があるじゃない? それって利己的過ぎませんか? ってことですよ。困難に陥ったとき「我先に」っていう考えは通用しないわよね。というか、パニック映画ではそういう人ほど先にオダブツするもの。たしかに感染っていう恐怖にさらされて、自分と家族の身を守るのが先決、ってことはあるけど、社会ってそれだけじゃないよね。協力しあわないと何も解決できないし、自利を追求し過ぎていた今までを省みるには、この映画はいい教科書よ。きれいごとのように聞こえるかもしれないけど、まずは手を取り合う姿勢から。だってプライドマンスだも〜ん。
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映画:パレードへようこそ
ストーリー/サッチャー政権下のイギリス。プライドパレードの反省会で、活動家のマークは自分達と炭鉱労働者たちの共通点を見出し、炭鉱町と共闘することを思いつく。しらみつぶしに炭鉱組合にあたっていった彼らは、ウェールズの小さな村とコンタクトに成功するが……。
監督:マシュー・ウォーチャス
出演:ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、アンドリュー・スコット ほか
配信:U-NEXT、 Amazon Prime Video(レンタル)
KADOKAWAよりDVD発売中
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96