映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第39回目
イタリアといえば、バチカンと接している国だけにカソリックが大半で家父長制が強く、欧州の中では性的マイノリティに対しての偏見がまだ強め。
その一方で、陽気で楽観的な気質から、なんくるないって方も多いのよね。数々の映画から受け取れるステレオタイプなイメージだけど。だから、性的マイノリティを描いた映画もかなり盛んで、家族を巻き込んだコメディが多いのよね。フェルザン・オズペテク監督の『あしたのパスタはアルデンテ』とか。
で、今回の『泣いたり笑ったり』はそのパターン。2組の家族が結ばれようとするときに起こる騒動を描いたコメディよ。両家のパパ同士(画商と漁師!)が再婚を決めていて、それを知った家族が大騒ぎ! というお話。なにがいいかって、このパパ2人ともイケオジってことはもちろんなんだけど、彼らを取り巻く女性たちなの。
家族の中で2人のことを心から祝福してくれるのは少数派。反対はしないけど受け入れるまでに時間かかるわー、って人多数。そして、めっちゃ大反対というのが数名。この構図だけ聞くと、ほぉほぉ、これは大反対ってのは漁師の息子だろ、って思うでしょ? ブー。違います。大反対するのは画商パパの娘。そして、大賛成ってのが画商パパの元恋人の女性。
ステレオタイプじゃないのよ〜。これがとてもよろしい。だって、こういうパターンだってあるでしょうし、なんならその反対の仕方(2パパをめちゃ妨害しまくる)とか、あーもーわかるけど女子校っぽいやり方! みたいな(それこそ偏見ですが)。
そしてなにより、大賛成の元カノの潔さが素晴らしいの。画商パパの娘を説教するシーンがあるんだけど、頑としてパパの幸せを認められない彼女に対して「あなた、子どものまま老いるって、本当に惨めよ」と言い放つの。もーーーー、マジそのとおり! 受け入れられないのは本人の問題であって、幸せを求めようとしている当事者には全く関係のないことだもの。それが親子であってもね。
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■泣いたり笑ったり
ストーリー/夏の海辺でバカンスを過ごすためにやってきた2組の家族。両家の年長者であるトニとカルロは、じつはカップル。共に子や孫はいるけど、妻とは離別しており、再婚を家族に告白するつもりだった。が、それは最悪の形でなされて、両家は大混乱に………。
監督:シモーネ・ゴダノ
出演:アレッサンドロ・ガスマン、ファブリッツィオ・ベンティヴォッリオ、ジャスミン・トリンカ ほか
配給:ミモザフィルムズ
公開:YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96