井上健斗のカルペディエム Vol.8/子どもを授かるトランスジェンダーパパ急増中!? パパになる方法とは?

近年、新しい家族の形が増えている。 
FTM(女性→男性)が性別変更後に女性と結婚。その後、それぞれの方法で子どもを授かりパパになる。今回は、そんなトランスジェンダー男性が子どもを授かるいくつかの方法をご紹介。

ぜひ、子どもを視野に入れた家族形成をお考えの方の参考になればありがたい。

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妻が妊娠・出産するパターン
妻が出産するための方法は大きく分けて3つ!!

>1つ目は「セルフ受精(シリンジ法)」
排卵日に合わせて精子提提供者から精子をもらい、自分たちで(セルフで)受精させる方法。自然妊娠と同じ原理で柔らかいスポイトなどで膣に精子を注入する。

>2つ目は「AID(病院で人工授精)」
セルフ受精と原理は同じだが、医師が行うことと、専門機材で奥の子宮口まで挿入する方法。また精子の運動量チェックなども行えるため、セルフに比べると妊娠確率は高くなる。ただし、公にトランスジェンダーのカップルに対応している病院は少ない(ほぼないに等しい)。医療機関によっては、「トランスジェンダーお断り」とウェブサイトに掲載されている病院さえあるのが現状。

>3つ目は「体外受精(顕微授精)」
医師の手術により採卵して、体外で精子と卵子を受精させる方法。医療機関(病院や不妊治療クリニック)で行うのだが、AID同様に公に行なっている病院は皆無に等しい。今後トランスジェンダーを対応するようになるのかは不明。

●妻に連れ子がいるパターン
シングルマザーとお付き合いをして結婚、連れ子と養子縁組する。もちろん子どもはいるが養子縁組をしないパターンもある。選択は各家庭それぞれだろう。

●里親になるパターン
国や各自治体の里親制度で里親になる。里親と里子を繋ぐ、民間の有料マッチングサービスもある。里親の場合は妻含め血縁関係がない子どもを受け入れることになる。ちなみに、日本には平安時代から里親制度があって、昭和23年(1948年)に現法律のベースになる制度が施行されたのだそう。

●自分で妊娠、出産するパターン
このパターンはとても珍しいが日本でも前例がある。妻がなんらかの理由で妊娠できない場合や、初めから自分で妊娠、出産したいと思っている人もいる。他にも様々な理由があると思うが、今後は、自身で出産するFTMの割合が増えてくると感じている。ただし、子宮卵巣がある状態でないと妊娠、出産はできないので、ホルモン治療を受けて見た目が男性化していても、戸籍上は女性の方のみとなる(現在の法律上、子宮卵巣がある状態だと日本では性別の戸籍変更はできないため)。

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●新しい家族の形
日本の性別変更条件の中に「生殖機能を永続的に欠く状態」と言う条件がある限り、性別変更をしたFTMは生殖機能を失っている。妊娠出産もできないし、 もちろん男性としての生殖機能は持ち合わせていない。
性別変更をすることで結婚は可能だが、自身と血縁関係のある子どもは授かれないようになっている。そのため、僕たちの子作りは一手間かける必要があるが、子どもを育てたいと願う方にはぜひ、検討してほしい。

FTMの場合はセルフ受精で子どもを授かるケースが多い傾向で、精子提供者もさまざま。兄弟や親戚にもらう人、友人からもらう人や、見ず知らずの人からもらうケースがある。どの方法にせよ、現在の法律、制度で想定されていない事態だが、現実が先に動き出している。

トランスジェンダーでなくても同じことだが、子どもを授かりたいと思うかどうかは、個人差があること。全ての人が子育てを望んでいるわけではないし、必ず子育てをしなければいけないわけでもない。ただ、自分の人生を自分で決めて選択していく自由は、誰にでも与えられなければいけない人間としての権利だと思う。

LGBTだから結婚や、子どもを諦めなければいけないということはとても悲しい。まだ存在すらしていない子どもの気持ちを代弁し、かわいそうだとか、いじめられたらどうするんだ!など根拠のない否定が今の時代もあることに正直がっかりしている。
あくまでも個人的な意見だが、愛は血縁関係を超えるし、LGBTが結婚や、子どもを諦めなければいけない法律や、現実が見えず想定されていないと言えてしまう視野の狭さの方が僕はよっぽど問題だと思う。

実際にその子どもが誕生して、今の時代に生きているんだから。「想定されていない」というのは過去の話ではなくて、これからの未来の話を進めてほしい。

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文/井上健斗  Twitter@KENTOINOUE
イラスト/RYU AMBE  Instagram@ryuambe
記事協力/性同一性障害トータルサポート/G-pit