映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第52回目
レナード・バーンスタインってご存知かしら。
吹奏楽界隈では作曲家としてお馴染み(「キャンディード序曲」とかね)、管弦楽では名指揮者としてその名を轟かせた、20世紀アメリカ最大の音楽家です。
小澤征爾や佐渡裕など、バーンスタインに師事した指揮者は数多。ヘルベルト・フォン・カラヤンと同時期に活躍していたことから、カラヤンのライバルなんて言われたこともあったっけ。そんなバーンスタインの伝記映画『マエストロ:その音楽と愛と』が、始まったばかりの映画賞レースで注目を集めております。
彼のキャリアの転機となった1943年から、晩年の彼が振り返るって形式で描かれる伝記映画です。
大指揮者ブルーノ・ワルターの代役としてニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団を指揮して、一夜にしてセレブ化した彼に、どんどこ仕事が舞い込むのね。そんな中、出会ったのが妻となる俳優のフェリシア。
2人は愛し合い、結婚し、3人の子どもをもうけ……なんだけど、バーンスタインってゲイなのよ。
このエピソードは存命中から有名で、彼の伝記を描く上ではもっとも重要。フェリシアと子どもたちのことは全身全霊で愛しているんだけど、タイプの殿方にもちゃっかり手を出しちゃうもんだから、夫婦関係が微妙にぎくしゃくするのね。そこを本当に見事に描いてる傑作でございます。
20世紀後半に働き盛りだった大多数のゲイ男性は、当時の偏見と差別ゆえに自分らしさ、特にセクシュアリティを公にすることができなかったの。その葛藤が如実に描かれているのがとても良い〜。
ちなみに74年の名演、マーラーの交響曲第2番のシーンは、まさかの完コピですので、元ネタをチェックしておいてね(YouTube/バーンスタイン:マーラー・復活 終楽章4/4)。
■マエストロ:その音楽と愛と
監督・出演:ブラッドリー・クーパー
出演:キャリー・マリガン、マット・ボマー ほか
配信:現在、Netflixにて独占配信開始。一部劇場にて現在公開中
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96