性の揺らぎは、既婚の中年男にだって訪れるものよ? “男らしさ”に苛まれる煙突掃除人の対話劇「SEX」を観て、笑って、語ってみて

LGBTQ映画を扱うゲイの映画ライターによるコラム連載

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映像作品をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第72回目

ジェンダーやセクシュアリティを強固に固定している人はたくさんいらっしゃるけど、ゆらぐ人やセクシュアリティとセクシュアル・アイデンティティが一致しない人もたくさんいるってこと、ちゃんとわかっておいたほうがいいと思うのよ。それを真っ向から描いた傑作『SEX』が公開。

ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の最新作『DREAM』が今年のベルリン国際映画祭の最高賞・金熊賞を受賞した記念に、近年の彼の3作品(どれも舞台はノルウェー・オスロ)をまとめてぽん! と観られるチャンスでございます(3つとも日本の劇場初公開)。 3作まとめてご覧いただきたいんだけど、もろ直球タイトルの『SEX』は煙突掃除人の中年男2人のセックスのお話。といっても、彼ら同士がデキちゃうのではなく、2人とも性に揺らぎがあることに気づくってお話です。

「夢の中でデヴィッド・ボウイに女性としてみられた」ことが思わぬ解放感につながった金髪の男と、それを聞いて「客の男とセックスしちゃった」という茶髪の男。でもともに女性と既婚で「ゲイじゃない」と否定。一時の気の迷いとしたかった2人だけど、一度動いた感情は止められず、生まれて初めて自分のセクシュアリティとジェンダーに向き合う……っていう物語です。 彼らの素直な気持ちを阻むのは、世間体だったり道徳に背いているのではないかという疑念。

でも、性についてを語り合うと、それまで気づかなかった自分の一面に気づくことがあるんですよね。そもそもジェンダーを持つってどういうこと? 今まで自分がそうだと思っていたセクシュアリティが違うからって何が変わるの? とか。自己認識とほんとのアイデンティティの間にはギャップが存在し、誰にでも起こり得ることを追求した対話劇です。話し始めると小難しく聞こえちゃうけど、観て語り合うことが大事な作品。なので、気持ちを共有できる方と一緒にご覧になって~。

◆『SEX』 9月5日より、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次ロードショー(特集上映「オスロ、3つの愛の風景『DREAMS』『LOVE』『SEX』」として)
https://www.bitters.co.jp/oslo3/
監督・脚本:ダーグ・ヨハン・ハウゲルード/出演:トルビョルン・ハール、ヤン・グンナー・ロイゼ、シリ・フォルバーグ、ビルギッテ・ラーセン ほか/配給:ビターズ・エンド

文/よしひろまさみち X@hannysroom
イラスト/野原くろ X@nohara96

記事制作/newTOKYO

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