ーー役者を夢見る若き二等兵セルゲイと、謎めいたパイロット将校ロマン。二人の友情が愛へと変わるのに、そう時間はかからなかった。
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。
そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。
セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。
写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。
しかし当時のソビエトでは同性愛はタブー、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。
そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだったーー。
PET SHOP BOYSやMobyらのMV監督として知られていた本作の監督ペーテル・レバネは、2011年ベルリン国際映画祭にて見知らぬ男に「この本を読んで貰えないか」と声をかけられたことが、『ファイアバード 』製作の始まりだったと話す。
ペーテルは『ロマンについての物語』と表紙に書かれた本をその週末には読み終え、すぐ映画化を決めたそうだ。
それほどに、無名の俳優セルゲイ・フェティソフが綴ったこの回想録は、ペーテルの心を深く突き動かしたのだった。ペーテルは2014年に『キングスマン:シークレットサービス』などで知られる俳優、トム・プライヤーと知り合うと意気投合。
二人はセルゲイに多くの時間をかけてインタヴューを重ね、脚本の準備を始めた。
セルゲイのことを知れば知るほど、二人はこの企画にのめり込んでいった。“彼の生き方は愛の力そのものであり、勇気と歓びと人生への驚きを喚び起こす”と。
しかし三人の共作による脚本が完成した矢先、ペーテルとトムの元にセルゲイ急逝の訃報が届いた。2017年だった。
ペーテル、トム、セルゲイの想いを乗せて2021年に公開された『ファイアバード』はエストニアにおいて、LGBTQ映画として初めて一般劇場公開され、大ヒットを記録。
2023年3月には国会で同性婚が議決、2024年3月に施行されるに至った。バルト三国はもちろん、旧ソ連圏では初、エストニアは世界で 35 か国目の同性婚承認国となる。
そして2024年、日本で封切られる本作。監督は「今こそ「愛すること、 愛されること」という普遍的で基本的な人権を自認し、尊厳を持って明言するときだと信じている。この映画がそのきっかけとなってくれたら、これ以上の喜びはないだろう」とコメントしている。
ーー混沌とする社会情勢で多くの人々の人権が侵害されている今だからこそ、劇場に足を運んで観てほしい一作だ。
■ファイアバード 2024年2月9日(金曜) 新宿ピカデリー他にて全国公開
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ペーテル・レバネ監督・脚色作品/共同脚色 : トム・プライヤー/セルゲイ・フェティソフ/原作:セルゲイ・フェティソフ/出演:トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ダイアナ・ポザルスカヤ/[ 2021年 | エストニア・イギリス合作 | 英語・ロシア語 | 107分 | 1.85:1 | 5.1ch | DCP & Blu-ray ]/配給・宣伝:リアリーライクフィルムズ/宣伝デザイン:HYPHEN/日本語字幕翻訳:大沢晴美/関西地区営業・宣伝:キノ・キネマ/北海道地区営業・宣伝協力 :palmyra moon
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画像提供/リアリーライクフィルムズ
記事制作/newTOKYO