2021年1月22日(金)より劇場公開される映画『天空の結婚式』。幻想的で美しいイタリアの田舎町を舞台に、同性婚やカミングアウトを題材としながらも、クセが強い人々と家族が騒動を起こすハッピーロマンチックコメディとして描かれているのだが、リアルな同性結婚式って実際どうなんだろう?
そんな疑問を、今年1月9日(土)に結婚式を挙げた、まさひろさん(33歳/画像左)&こうすけさん(31歳/画像右)カップルに、「しあわせの形」について色々伺ってみました。
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――ご結婚おめでとうございます!まずはお二人の馴れ初めを教えてください。
まさひろ:三年前に共通の友人の紹介で出会いました。二人ともお酒が好きで、僕のいきつけの店でよく呑んでました。
こうすけ:同じゲイ同士、日頃の悩みや愚痴を話していくうちに、食べ物や人の好み、大切にすることや許せないことが似てて、価値観を共有でき、すぐに仲良くなりました。
――お付き合いを始めてすぐにご結婚を意識されたのでしょうか?
まさひろ:ビビビ!ときたところはありましたね(笑)。僕の友人や家族に紹介したところ、彼は僕だけじゃなく僕の周囲の人も大切にしてくれる人だったし、誰にでも優しさやユーモアを持って接してくれる姿をみて、次第に結婚したいという気持ちになりました。
こうすけ:僕は自分がゲイだということを母親だけにしかカミングアウトしていませんでしたが、彼は(ある程度気の許せる範囲で)ゲイではない友人にもカミングアウトしていたので驚きました。初めて「この人が彼氏なんだよね」って彼の友人に紹介された時はとても緊張しました…。
まさひろ:最初は僕も母親にだけ伝えてましたが、いつの間にか家族全員知っていました。子どもの幸せを一番に願ってる人だから、彼を紹介した時も、幸せそうで良いじゃない、って感じで受け入れてくれました。
こうすけ:互いの実家に挨拶に行くようになり、家を買い、パートナーシップ宣誓をしました。もしもの時のことを考えて、お互いを保険の受取人にしたり…この頃からもう結婚してるような関係性でしたね。
――ズバリ、プロポーズはどちらから&どんな場所でされたのでしょうか?
まさひろ:ディズニーシーでサプライズでプロポーズをしました。
こうすけ:本当びっくりしました。嬉しかったです(照)。それで、普段からたくさんの人と交流があったし、たくさん支えていただいたので、結婚式を挙げて感謝の気持ちを伝えたいねって二人で話していました。
まさひろ:LGBTフレンドリーの式場がある、という情報は知っていたのですが、何が本当の情報か分からず、信頼できる友人におすすめのプランナーさんを紹介していただきました。
そこで感じたのは、「結婚式をしたい!」って思っても、どこから何から始めれば良いのか全く分からないなぁというところです。
式場は理解があっても、プランナーさん個人は偏見があるかもしれないですし、完全に全てを任せて結婚式のプロデュースをお願いすることって意外とハードルが高いと感じました。
こうすけ:本当に良いプランナーさんとの出会いがありました。プランナーさんも男性同士の結婚式を手がけるのは初めてとのことで、色々相談しながらみんなで内容を決めていきました。おかげさまで大切なところは抑えつつ、型にはまらない素敵な結婚式となりました。
例えば、生まれてからこれまでの「花嫁の人生」を意味するアイルランナー(バージンロードに敷くカーペット)は僕らには不要なのではがしてくださったり、ゲスト全員で人前式を執り行ったりしました。
――いきなりですが、お二人が指にはめている結婚指輪を見せてくださーい!
まさひろ:ぜひぜひ! 実は2018年6月21日にパートナーシップ宣誓制度を使用して、その時の指輪が思い入れがありすぎて、クリーニングして結婚式の指輪として使いました。
こうすけ:男性二人で指輪を買いに行くハードルはありましたが、店員さんが優しく対応してくださって、そのことが本当に思い出に残っているので、その指輪で式を挙げたいと思ったんです。
――同性結婚式前と後での、お気持ちの変化は何かありましたか?
まさひろ:結婚式でのみなさんからの祝福の言葉や拍手を受けて、今までの道のりは周りの方々の支えなしでは、越えて来られなかったものだと再確認をしました。また前日や当日の豪雪で大変だったのですが、「親族のこと気にしなくても会場にはみんな行くから、お前は他のゲストの方々の心配だけしておけ!」と親族から言われた時には、涙が出そうになりました。気持ちがきゅっと引き締まりましたね。
こうすけ:招待した学生時代の友人にはこれを機にカミングアウトをしています。今までクローゼットだったので、学生時代は「彼女」と言っていた相手は「彼氏」で、今回式を挙げることにしたから来てくれない?と伝えた時に誘った人はみんな来てくれました。今まで自分がどれだけ周りに気を張っていたのか、ありのままに生きることがどれだけ楽なのかが分かりました。
まさひろ:みんなの前で誓いの言葉も交わしたので、これからの人生をしっかり二人で歩んでいかないとみなさんからいただいた承認の拍手を裏切ることになる、と気持ちを新たにすることができました。
――映画『天空の結婚式』をご覧になったそうですが、ご自身と比較していかがでしたか?
まさひろ:母親の反応はうちと同じような感じだなぁと思いました。母は自分のお腹を痛めて自分の子どもを生んでいるので、カミングアウトをしても理解はしてもらえると思って相談したことを今でも覚えています。
幸いにも父親からも理解してもらえましたが、家・伝統・歴史・社会的立場などが念頭にある場合、『天空の結婚式』のお父様のように「理解しようにもどうしよう」という気持ちの整理ができなくなることは想像できるなと思いました。
こうすけ:主人公アントニオの両親は息子のことを愛していますが、彼のセクシュアリティには母親と父親で対極的な感情を抱いています。私の母はその両方の感情を抱いていたんじゃないかなぁ、と思います。
自分の子どもが、一般的じゃない人生を歩むことへの不安や、受け入れてあげたい気持ち、いろんな感情を経て、僕のことを受け入れてくれたのは、母の愛だと感じました。カミングアウトは必ずする必要はないと思いますし、タイミングも大切です。この映画を観て、例え受け入れられず、疎遠になることはあっても、親が理解し、全ては無理だとしても、いつか一緒に笑い合うことができることを教えてくれました。
――将来お二人の描いている夢を教えてください。
こうすけ:まずは法的にも婚姻関係を結べるようになりたいです。愛し合う二人が一緒に人生を歩むことができるだけでも素晴らしいことですが、現状、法的には他人なので。もしも何かあった時にお互いを守ることができるのか不安です。僕たちは、「結婚の自由をすべての人に」訴訟という、いわゆる同性婚訴訟の福岡の原告になりました。同性婚が日本でも実現して欲しいと思っておられる方、裁判に関心を寄せてくださったり、国会議員さんや周りの人たちに同性婚のことを伝えたりして、一緒に変えていきましょう。将来は、同性同士の結婚が認められるようになって、たまには美味しいものを食べて、旅行にも行って、末永く、二人で健やかに暮らしていけたらなと思って、仕事を頑張っています。
まさひろ:まったりと過ごしたいです(笑)。LGBTQだからどうこう、ではなく、僕らも異性カップルと同じように愛し合って家族、親族、友人を大切にして過ごしています。彼らはゲイだからというカテゴライズでなく、彼らも素敵な「ふうふ」だもんねと思ってもらえるような社会の変化と、それを気付かせないような自然な家族になっていきたいと思います。
――これからパートナーと結婚したいと思っている方へのメッセージをお願いします。
まさひろ:法的な婚姻は現状では難しいですが、結婚式をしたいと思っているなら結婚式をしましょう!と言いたいです。一度きりの自分の人生!正解は自分で決めることだと思っています。悔いのないよう自分の叶えたいことを叶えましょう!
こうすけ:まずは結婚したいと思える人と巡りあえた奇跡を大切にして欲しいです。赤の他人同士が人生を共にすることは生半可なことではないし、良いところも悪いところも全てお互い手を取り、支え合っていかなればいけません。それでもこの人しかいないと思うのであれば、その手を絶対に離してはいけません。時代や周囲の環境は必ず変化が起こります。僕が経験したこの幸せは、誰にだって訪れる可能性はあるし、誰もがその権利を持っています。挫けず、凹たれず、自分の愛を貫いてほしいと思います。
■ 映画:天空の結婚式
2021年1月22日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ
©Copyright 2017 Colorado Film Production C.F.P. Srl
htpp://tenkuwedding-movie.com
■ まさひろさん Twitter@1853mkr
■ こうすけさん Twitter@pandaropanda621
インタビュー/みさおはるき
写真/マスダヒロシ、他
記事制作/newTOKYO