映画ライターのよしひろまさみちが、今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム「まくのうちぃシネマ」。
日本でも新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が出されました。そんな時にこそ、落ち着いた対応こそ必要だと説いてくれる映画『コンテイジョン』。全3回でお届けする最後の観るべきポイントをご紹介していきます。#おうち時間 の有効活用としてぜひ観てほしい作品です。
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緊急連投、第3弾です。COVID-19による脅威は世界規模で起きているため、国や地域単位では全く乗り越えることができない話になってます。そこで重要なのが、ウイルスがどこからやってきたのか、ということ。引き続き『コンテイジョン』から学びとれることを書きますね。
1:ウイルスがどうやって感染するか
2:集団パニックが起きるときのきっかけ
3:未知のウイルスがどうやって生まれるか
今回はこの3。そもそもウイルスって何よ、って話ですよ。なんか目に見えないし伝染するし怖い、というイメージはあると思いますが、ウイルスについての詳しいことはWikiってくださいな(あたしも専門外ですので)。
『コンテイジョン』では、致死性の感染症のもととなったウイルスが、どこで生まれて、どうやって最初の患者にうつったか、ということはオーラスで描かれています(観ていない人のため、詳細は伏せておきますね)。すると、自然界で発生して、まったく想定外のルートで広まることが分かります。この作品はSARSパンデミックをベースに描いているので、推測すればすぐにバレますけど……。
でも、その発生源となる生物がどうやってウイルスを生み出したか、なんてことは描かれてません。なぜかって? 分かんないのよ!
実はまだこれは専門家が研究してるテーマで、どこから来てどう活動するのか、なんてことは分かってないんですね。しかも、人や生物にとって必要不可欠だったり、役に立つウイルスもあれば、逆のものもあったり、しかも個体数は無数といっていいほどあるから、ほぼ無限に研究できるテーマ。分からないから怖いし、分からないから対処にも困るわけ。
で、問題は、そのわけのわからないものが「発生した場所」で差別を生むこと。集団ヒステリーと同じテーマですが、人って何かにカテゴライズすることでアイデンティティを保つところがあるから、感染症ウイルス=悪=出元の人も土地も悪、というように連想しちゃう人が出てくる。いつどこで発生してもおかしくないのによ? 例えば、今回の騒動のもとになっているCOVID-19が、日本のどこかで発生した可能性だってゼロじゃないし、違うウイルスがこれから発生することだってあるかもしれません(このへん、分かりやすく面白い本が岩波科学ライブラリー『ウイルスと地球生命』。お暇ならどうぞ)。
邦画の『感染列島』って映画だと鶏インフルの発生源になった養鶏場の社長が、猛烈な批判で自殺するシーンがあるんだけど、なにもその養鶏場が悪かったわけじゃないのに、追い詰めたのは「人」。だから、発生地、パンデミックの場所は、病名にすべきではない、ということ。じゃないと、差別や暴力が生まれるわけ。
これも、40代以上のゲイは知ってる話でしょうけど、80年代から長いこと続いた「HIV=ゲイの病気」と間違ったイメージの拡散を経験している我々だからこそ、考えて行動しないとダメなことでしょ。みなさん、本当に冷静に。そして、SNSが普及した今、個人も情報を発信する「メディア」としての自覚をもってちょうだいませ。
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映画:コンテイジョン
ストーリー/香港出張からミネアポリスに戻ったベスは、旅先でひいた風邪が悪化し急死。それはただの風邪ではなく、未知のウイルスによる感染症と分かり、CDCが動き始めるのだが……。
監督/スティーブン・ソダーバーグ
出演/マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ ほか
DVD・Blu-ray販売・発売/ワーナー・ホーム・ビデオ
配信/Netflix、YouTubeムービー、Googleプレイ
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96