《絶対に観るべきLGBT映画》 あなたにとっての「家族」とは? 映画「バオバオ」が伝える家族のカタチ

今年5月にアジアで初めて同性婚が認められた台湾から、”赤ちゃんが欲しい”とゲイとレズビアンの2組のカップルが妊活をして、家族になる物語を描いた映画「バオバオ フツウの家族」が9月28日(土)より公開される。

同性愛であること、異性愛であること、様々な人々の揺れ動く心情と、愛を信じ突き進む姿勢に何を思うか?

「赤ちゃん(バオバオ)」を授かろうと奮闘する物語

ロンドンの会社で働くジョアンと取引先の友人チャールズには、それぞれ画家シンディと植物学者ティムという同性の恋人がいる。 

4人はそれぞれの想いからシンディの子宮を借りた妊活に同意し、チャールズとティムの精液を採取してシンディの子宮に注入するのだが一向に妊娠しない。思い余った4人は病院での体外受精を決断する。ジョアンとシンディの卵子にチャールズとティムの精子を注入してできる二つの受精卵をシンディの子宮に戻して、男女の赤ちゃんを産み、男の子はジョアンたち、女の子はチャールズたちが引き取るというものだ。 

順調そうに見えた矢先シンディは出血する。子供を奪われる悪夢にうなされるシンディのことが気がかりでジョアンは仕事で失敗をしてしまう。ロンドンであと1年がんばれば英国籍も取得できるというジョアンにとっては大きな痛手だ。そんなところへチャールズが小切手をもって訪ねてくる。病院から戻ったシンディは偶然それを見つけ、逃げるように台湾に戻り、幼なじみで好意を寄せてくれている警官タイを頼る。一方、チャールズはティムに、赤ちゃんが自分たちの子供になることを伝える、手を打ってきたと…。

誰目線で観るかによって変わる人間ドラマ

これまで観たLGBT作品のダントツ1位になりました。LGBTの世界観を描き出した名作はたくさんあるものの、今作は思春期の揺れ動く恋模様や、より大きな社会的権利を求めるものではなく、家族という選択をした同性愛カップルの現実問題に焦点をあてることで、「生きること」をより深く考えさせられるドキュメンタリーのようなものでした。

同性カップル2組の妊活の苦労と成功。シンディのなかで芽生えていく母性とお腹の子を手放す怖さを軸に物語は進んでいくのですが、なぜそれぞれが子供を欲しがったのか? フツウの幸せを手にしたいがために選択するしかなかった互いの行動に共感できて、それと同時に同性愛者を愛してしまった異性愛者が、父親になると決断する心の痛みをも描くことで、「共に生きていく愛のカタチ」を表現してくれているようでした。

正直、この映画を観るまで僕はこの種の問題に考えが及ばなかったことにハッとさせられたし、子供が欲しいというテーマだけではないので、いろんな人に観てほしいと切に願う傑作です。

そして、言葉にするのが難しいのですが、ゲイ目線で観るのか、レズビアン目線で観るのか、ストレート目線で観るのか、4人の誰かの立場になって観るかによって、物事の捉え方や考え方など、いろんな見方のできる深い人間ドラマだと感じ入りました。

さらに場面中に繰り広げられる心をつくセリフの数々にも注目です。

「僕は女じゃないから愛する人の子を産めない、その苦しみがわかる?」「ゲイとレズビアンは自力で妊娠できない。子供を望んでも私にその機能はない」とパートナーに言い放つ言葉がダイレクトすぎて、胸が締め付けられました。でもこれは僕たちだけに言えることではなく、不妊症・不妊治療に悩む女性たちの想いとも重なり、より一層考えさせてくれるのです。

最後に一番好きなセリフがあります。
「10年後も、二人がいい関係でいたい。幸せでいたい。ただそれだけ」と。
何故か涙が止まらなくなってしまったのですが、僕自身何か自分の中で思うことがあったのかもしれません。

9月28日(土)より全国順次公開されていく「バオバオ フツウの家族」をぜひ観てみてください!!

映画:バオバオ フツウの家族
2019年9月28日(土)新宿K’s cinema 他、順次公開

劇場にて上映後のトークショーも決定!
  詳細はクリック!

☞ 同性カップル割引
「新宿K’s Cinema」限定鑑賞チケット購入時、受付で「バオバオ!」と一緒に合言葉を言うと、なんと一般:1,800円→1,000円 に!!

ストーリー:「赤ちゃんが欲しい」と、ロンドンに住む2組の同性カップルが協力して妊活を始める。双子を妊娠したシンディは、ひとりロンドンから台湾に戻る。不安と悲しみに満ちた彼女が頼ったのは幼馴染の警官タイ。かねてよりシンディを密かに思っていたタイは、理由も聞かずに自分がお腹の子の父になると言うのだが、シンディの心は癒されない。子供を持って家庭を築きたいと願うシンディとジョアンがようやく待望の子宝に恵まれたのに、なぜ彼女はひとりで帰国したのか…。 

監督:謝光誠(シエ・グアンチェン)《第1回長編監督作》
出演:雷艾美(エミー・レイズ)、柯奐如(クー・ファンルー)、蔭山征彦(カゲヤマユキヒコ) 
蔡力允(ツァイ・リーユン)、楊子儀(ヤン・ズーイ)
2018年/台湾/97分/原題:親愛的卵男日記 英題:BAOBAO 
配給:オンリー・ハーツ/GOLD FINGER 
協力:GENXY/ビームス
後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター 

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記事制作 / 村上ひろし(newTOKYO)