モーニングルーティンや休日の様子などをはじめ、何気ない日常を覗き見している感覚がクセになるとYouTubeでも人気ジャンルとなっている、Vlog(ブイログ/ブログの動画版)。 そんな中、今年3月からチャンネル登録者数を伸ばしているのが『ゆさくわーるど』こと、ゆさく君。人気に火をつけたのは彼氏との温泉旅行の様子をまとめた一本のVlogだ。「特別なことは意識していないし、世の中に求めるものがあって始めたわけではない」と話す彼だが動画コメント欄を見る限りでは、LGBTsはもちろん幅広い視聴者に支持されており、等身大のライフスタイルに注目が集まっている。 セクシュアリティへの気づきやSNSとの付き合い方、動画クリエイターとしての歩み、彼氏や将来のこと…。ありのままを大切にする彼のこれまで、そしてこれからを知れば、自分らしく生きるヒントがきっと見つかるはず。
――「身元がバレるのは怖かった。ただそれ以上に新たなコミュニティを知りたかった」。SNSでの行動が大きな一歩へ繋がった瞬間とは?
自身のセクシュアリティについて最初に考えたのは、小学6年生の時に参加した学校の宿泊行事での出来事。ある男子から友達以上の関係性を求めるアクションを受けたのですが、不思議と嫌ではなかったんです。相手は同性でしたが「人のことが気になるとは、こんな気持ちなのかぁ」となんとなく「好意」という言葉の意味が分かった瞬間でしたね。ただ、この日を境に男子にしか目が向かなくなったのかと言われると、そうではなくて。 確かに同性への興味が完全になかったとは言い切れませんでしたが、中学生、高校生と女子とお付き合いをすることは全く苦ではなかったし、当時の彼女とも周囲のカップル同様の関係性を築けていました。ただ、そんな曖昧だった恋愛対象として意識するラインが明確になったのは高校卒業後、社会人になってから。経済的にも時間にも余裕ができ、整った生活リズムで日々を過ごす中で好奇心からなのか、ふいに男性同士のアダルトコンテンツを見てみようと思ったんです。実際、目にすると心と身体が反応して…以降、女性ではなく男性を恋愛対象、性的対象として考えるようになりました。 ゲイコミュニティが盛んなツイッターを始めたのもその頃だったと思います。自分以外のゲイの人と知り合いたいという気持ちで始めてみたものの、当初は「友達にバレたらどうしよう」という怖さから自分の顔が写っている写真をアイコンや投稿などで使用することはありませんでした。ただ半年ほど経った後、このままだと交友関係が広がることはないなと思い、意を決して自分の顔写真を投稿してみたんです。
すると、そのツイートがリツイートやいいねなどで界隈に広がり、今でも関係の深い友人と知り合うきっかけになりました。もしも、学校や職場など実生活を通して知り合った友達に知られる怖さが勝り、自分自身からオープンな姿勢をみせていなかったら現在、属しているコミュニティにいなかったかもしれない。既存の関係性や当時の自分自身の立場を手放すことになる覚悟の上での行動だったと考えると、とても勇気のいる瞬間だったんだろうなと改めて思いますね。 家族に自分のセクシュアルについて話したのは、それからちょっとしてから。当時付き合っていた彼氏と同棲に近い形で生活をするために実家を離れるタイミングの時でした。母にカミングアウト、といっても改まった感じではなくラインで実家を離れる理由と一緒に自身のセクシュアリティのこと、当時付き合っていた彼氏のことを話すと「やっぱりねぇ~」と自分の勘が的中したといったようなリアクションの後、「自分らしく生きれる選択肢が見つかったなら、その選択肢を選べば良いんじゃない?」と、ある意味予想通りの返信が返ってきました。この報告以前に当時付き合っていた彼氏を実家に呼んでお泊まりすることもありましたし、母と僕、彼氏の三人でご飯を食べることも珍しくはなかったので、僕たち二人の間柄が「友達」という雰囲気ではないことを察していたようです。 その後、妹も知ることになるのですが「へぇ~男の子が好きなんだ、BL?」ぐらいで半ばファンタジーに考えていた節はありましたが、それからずいぶんと年月が経ち今は理解していると思います(笑)。
――「ありのままの自分たちが視聴者の何らかの気づきに繋がれば嬉しい」。等身大のゲイカップルを発信するゆさく君が大切にしていることは?
地元での生活は安定していたものの、はじめしゃちょーさんの動画を目にする度、枠に捉われない自由な生き方に憧れる気持ちが日に日に強くなって。「動画クリエイター」というお仕事にチャレンジすべく、2018年秋に上京しました。上京して間もなく「MONO channel」のとーまさんにお誘いいただいて動画編集メンバーとして加入、YouTubeでの活動をスタートさせました。動画編集としてメンバーになったのは、身元がバレるのが怖いという気持ちが残っていたわけではなく、表立って話したりするよりも動画編集に興味があったから。プライベートでも家族や友達を撮影して作品を作っていたので、自分の能力を活かすならこっちかなと。 結局、動画にはちょくちょく出ることになるのですが、セクシュアリティについて知人からネガティブなメッセージが送られてきたとしても、母やツイッターを通して出会った友達が心の拠りどころになると思っていたので気に病むことはなかったと思います。幸いにもそういったこともほとんどなく、MONO channel自体の登録者数もどんどん増えていき、とてもやりがいを感じています。
こういった活動と並行して、今年3月から本格的に始動した個人のYouTubeチャンネル『ゆさくわーるど』では、現在お付き合いをしている彼氏との何気ない日常を切り取った動画を中心に投稿しています。彼氏との思い出を簡単に振り返れるように、Vlog感覚で残せたらと試しに温泉旅行の動画をアップすると、予想以上の反響がありまして。彼自身もセクシュアリティについてはフルオープンではないものの動画出演することを了承してくれ、僕たちのありのままを映した姿がLGBTs当事者はもちろん、同世代の視聴者の方たちへの生活のヒントや気づきになるのであれば、本格的にスタートさせてみようと思ったんです。これまで投稿した動画のコメント欄にはメッセージをたくさんお寄せいただいて、彼ら彼女らの生活の中の幸せな瞬間が生まれるきっかけに繋がっていると思うと、嬉しくなりますね。 発信する立場として特に心がけていること…そう言われるとあまりないかもしれませんね。人が傷つくような言動はもちろん、セクシュアルマイノリティを取り巻く時事問題について物申すと言った切り口で取り上げたりとかはしないですね。あくまで個人の意見がLGBTs全体の意見だと捉えられた場合、いろんな方にご迷惑をかけてしまうので。「ありのままの二人」でいること、これが一番心がけていることだと思います。僕たち二人の生活を見る中で何を感じ、思うのか。それは視聴者さんに完全に委ねています。
今は上京前に描いていた動画クリエイターとしての活動を軸にした生活を送ることができていますが、この選択で手放すことになったものがあるのも事実です。例えば以前のような安定した収入が約束されたお仕事も然り、父との関係性もカミングアウト以前と比べると決して良いと言えるものではありませんでした。ただ、今後生きていく上での不安要素が増えたとしても、僕の場合、一度きりの人生で後悔はしたくないという気持ちが勝って跳ね除けたというか。後は自分と同じセクシュアリティの仲間とSNSを通じてたくさん出会えたというのも強くいられることに繋がっているんじゃないかな。 今後は動画クリエイターとしての活動を充実させるという一つの目標が叶いつつあるので、彼氏との将来を考える上でのSTEP1とも言える同棲をモチベーションにして頑張っています。これからも変わらずありのままの二人を見せていきたいし、僕たちの動画を見た誰かの「ありのままの自分」でいられるきっかけになれたら素敵なことだなと思います。
■ ゆさく 本格始動してからおよそ3ヶ月で登録者数15000人越えを達成した 動画クリエイター 。中でも、彼氏との日常を切り取ったVlogは、等身大のカップルの様子を垣間見ることができると人気に。 ■ ゆさくわーるどYouTube ■ Twitter@_ys_official ■ Instagram@_ys_official ■ LINE LIVE
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取材・インタビュー/芳賀たかし 写真/新井雄大 記事制作/newTOKYO
※この記事は、「自分らしく生きるプロジェクト」の一環によって制作されました。「自分らしく生きるプロジェクト」は、テレビでの番組放送やYouTubeでのライブ配信、インタビュー記事などを通じてLGBTへの理解を深め、すべての人が当たり前に自然体で生きていけるような社会創生に向けた活動を行っております。https://jibun-rashiku.jp/