保守的な家庭に生まれた5人兄弟の4男の青春葛藤映画「C.R.A.Z.Y.」で、家族の絆を感じとってちょーだい!

映画ライターのよしひろまさみちの映画レビュー

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム

「まくのうちぃシネマ」第35回目

LGBTQ+の皆さんは、家族に対して正直でありたい、と思いつつも、社会通念や各々の家庭環境などの理由で、そうそうかんたんに自分をさらけだすことができなかったって人が多いと思うの。かくいうあたしもそう(勘のいい母にはバレてましたけどね)。

ちょっとでもそういうことを味わった経験のある人ならば、『C.R.A.Z.Y.』は刺さるわよー。60〜80年代の一家庭を、その家族の中でマイノリティの男の子目線で描いた青春葛藤映画。

よしひろまさみちの「C.R.A.Z.Y.」の映画レビュー

主人公のザックは、生まれたときから「特別」とされ、他の4人の男兄弟とはちょっと違ってたの。ってことは「はぁん、ゲイなんでしょ?」って思うでしょ? いや、たしかにそうなんだけど、ゲイであることで苦しむというよりも、家族と自分の間にある深くて長い溝に苦しんでいるのよ。

その原因は、めちゃくちゃ保守的マチズモなお父ちゃん。ところがよ、このお父ちゃんが本当のクズだったら「捨てればいい」ってだけのお話。
違うのよね〜。このお父ちゃん、いわゆる昭和のお父ちゃんって感じで、息子たちに対して自分の理想をおしつけるものの、全身全霊で息子たちを愛しているのよね。そこがこの作品のすごいところ(ついでにお父ちゃんの抑圧によって迷い道に入ってしまったのはザックだけじゃなく問題児の次男もってのがこれまた説得力大)。

よしひろまさみちの「C.R.A.Z.Y.」の映画レビュー

家族だからって価値観が違うことなんて当たり前なんだから、押し付けるのはあかん。けど、アプリで知り合った男のように容易には切れない家族の関係っていう、にっちもさっちもいかない一家を描いているのよ。そこで試すべきは「その場を一時的に去る」こと、っていうのを描いているのも素晴らしいのよねー。

おっと、語りすぎた。ザックがどうなるか、そしてこの家族がどうなるかは観てのお楽しみ。自分らしく生きることを抑制されることがどれだけの影響を与えるか、ってこと、よ〜く分かるわよ。

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■C.R.A.Z.Y.
ストーリー/1960年代、カナダ・ケベック。保守的な家庭に生まれた5人兄弟の4男ザックは、他の4人とは全く異なるキャラで浮いた存在。思春期を迎えた彼は、同性に惹かれてること、“普通”じゃないことで父との間に確執が生まれる……。

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ミシェル・コテ、マルク=アンドレ・グロンダン、ダニエル・プルール ほか
配信:現在、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー中

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96