映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第42回目
アメリカのアカデミー賞(第95回)が、現地時間3月12日に結果発表となります。日本でもこのタイミングにあわせて、アカデミー賞候補作の多くが観られますのよ。ただ、ここでそれらを紹介するのもおもろない。ということで、敢えてのクィア映画だけピックアップして、どの辺がクィアなのかをざっくり紹介します。今回もストーリーは割愛。ググってね。
まずは最多10部門11ノミネートの“エブエブ”こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。序盤、主人公エヴリンが会計事務所を訪れやり手会計士ディアドラからお説教を受けているとき、「あれ……これは」と、ゲイの方ならほぼお察しな形状をしたトロフィーがズラッと出てくるの。これがどう使われるか、中盤分かったときに大爆笑必至です。ちなみにマルチバースが舞台でキャラ変が著しいのですが、その中ではエヴリンと誰かさんがレズビアンパートナーっていう設定も出てきまーす。こちら、3月3日(金)に公開スタート。
ノミネート数6位の『TAR/ター』は、主人公の超売れっ子指揮者リディア・ターがレズビアン。彼女のパワハラを描いた物語ですが、ビアンだからどうこう、ということではなく、性別に関わらずパワーを持つと人間ろくなことしないわね、ということを描いております。ほぼケイト様の一人芝居のように見えるのも強烈な一作。こちらは5月の公開まで待ってね。
3部門ノミネートの『ザ・ホエール』は、主人公がゲイ。そして巨漢。自由に動けないほど重度の肥満症で死の淵にいるレベル。なんと272キロ設定です。ここまで太っちゃった原因は、恋人をなくしたショックから……うう、つらい。4月7日(金)に日本公開です。
国際長編映画賞候補でベルギー代表の『CLOSE/クロース』は、日本では夏公開予定。2人の少年の親密な友情を描いた作品ですが、これは監督のドンたんがゲイ。トランスジェンダーの少女を描いた『Girl/ガール』でぶっ飛びデビューしたフランス語圏の超注目監督でございますよ(イケメン。そしてTRPにしれっと来てた)。
最後はネトフリですでに配信中の『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』。主人公のブノワがゲイだった! と、配信直後にさんざん記事化されてましたが、マジそれ、物語の中では超ちっこいパートですから! ブノワがゲイだってことは重要ではなく、どこにでもマイノリティはいるし、だからといって特別なもんじゃないわよね、ということを見事に表現した役柄。ご注目は、ブノワのご自宅のシーン。「死ぬまで風呂入ってるんか!」というパートナーのセリフがあるんだけど、声だけで分かった方はよほどの映画好き。パートナーのお姿も1カット出てくるので、お楽しみに。大物よ。
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■エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
ノミネート:作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞、衣装デザイン賞、作曲賞、歌曲賞
監督・脚本:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティス、ステファニー・スー ほか
配給:ギャガ
公開:2023年3月3日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
■TAR/ター
ノミネート:作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、撮影賞、編集賞
監督・脚本:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット、マーク・ストロング ほか
配給:ギャガ
公開:2023年5月12日(火)より、全国ロードショー
■ザ・ホエール
ノミネート:主演男優賞、助演女優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー、サマンサ・モートン、ホン・チャウ ほか
公開:2023年4月7日(金)より、全国ロードショー
■CLOSE/クロース
ノミネート:国際長編映画賞
監督:ルーカス・ドン
出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル ほか
公開:今夏、全国ロードショー
■ナイブズ・アウト:グラス・オニオン
ノミネート:脚色賞
監督:ライアン・ジョンソン
出演:ダニエル・クレイグ、ケイト・ハドソン、エドワード・ノートン ほか
公開:Netflixにて独占配信中
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96