2003年に日本で初めて性別の変更ができる法律が成立。2004年の法律施行前までは、性別変更することなんてありえなかったったわけで、選択肢が増えた今は素直に嬉しい時代と言える。しかし、「性別の変更ができる法律」は、本当に素直に喜べる状況なのだろうか?
性別を変更するには、ただ変更したいという想いだけではなく、様々な条件が課されている。日本での条件、海外での条件を比べながら、セクシュアリティについて考察していこう。
■ 日本の性別変更の条件
◇1:2名以上の医師から診断を受けていること
◇2:20歳以上であること
◇3:現に婚姻をしていないこと
◇4:現に未成年の子がいないこと
◇5:生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
◇6:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
上記の条件を満たせば、日本で戸籍上の性別変更が可能。条件5、6の項目は、簡単に言うと性別適合手術を受け生殖機能を無くすこと。性別変更をしたトランスジェンダーの大多数は、生殖腺を切除する性別適合手術を望んで受けているわけではない。国の法律に合わせ、戸籍上の性別を変更するための手段として手術を受けている。
■ 他国の性別変更の条件
◇生殖機能を切除しなくても性別が変更できる国がある。
◇スウェーデン、ベルギー、オランダ、デンマーク、アルゼンチン、ノルウェー、カナダ、マルタ、コロンビア、台湾、などは、性別変更に手術要件がない。他には、オーストラリアでは生殖腺の切除は条件にないが、乳腺摘出手術が条件。
◇イラン、ブラジル、キューバなどは生殖機能の切除は必要だが、性別適合手術を政府により無償提供されている。
世界で初めて性別の変更が認められたのは、1972年のスウェーデン。日本と比較すると、日本の法律が成立した年から31年も前の話になる。
■ 性別変更できない国、その他の事例
世界的に性別変更条件が緩和されているからといって、性別変更できない国もある。
タイは性転換大国と言われるほど、手術の症例数が世界トップクラスだ。たが、性別適合手術を受けることができても、ID上の性別変更は不可。
他には、ハンガリーのトランスジェンダーに関する法改正問題。今まで性別変更が認めらていたにも関わらず、2020年の法改正により、性別変更が禁止された。時代の流れから逆走する国もあるようだ。
■ セクシュアリティと生殖機能
◇国により性別変更の要件は様々だが、世界的に要件緩和の傾向がある。
◇生殖機能の切除要件は厳しすぎる条件だと思う。
選択肢として性別変更ができるようになった時代の変化は嬉しいけれど、望んでいない手術を受けなければ、本来の性別で生きられないものなのか?
セクシュアリティとは身体的な性別だけではなく、人間の内面、アイデンティティでもある。生殖機能がある、ないという2択で選別できるものなのだろうか?
僕は2009年に性別適合手術手術を受けて生殖機能を切除し、性別の戸籍変更をした。決して後悔はないが、今の時代に生まれていたらどうしていたんだろう…と考えていることもしばしばある。
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文/井上健斗 Twitter@KENTOINOUE
イラスト/RYU AMBE Instagram@ryuambe
記事協力/性同一性障害トータルサポート/G-pit