
映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映像作品をご紹介するコラム
「まくのうちぃシネマ」第81回目
祝・カンヌ国際映画祭最優秀女優賞! と、思いっきり話題に乗っかってみましたが、これ、かなりクィアな香りがするシスターフッド映画なんですよ。濱口竜介監督最新作、謎めくタイトルの『急に具合が悪くなる』です。
パリの介護施設の施設長を務めるマリー・ルーは、施設でユマニチュードを導入したことで、スタッフとの不和に苦悩中。うまく回れば介護する側もされる側もハッピーなんだけど、導入過程ではなかなかねー。っていうとき、たまたま迷子の自閉症スペクトラムの日本人少年を保護。保護者である祖父は一人芝居をするためにパリに来た役者で、演出家の真理と共にマリーの前に現れます。この出会いをきっかけに、同じ名前を持つ真理とマリーは急接近……というお話なんだけど、めちゃくちゃ超大作。なんと3時間超。
ところが、頻尿のあたしがお手洗いのことを忘れ、体感2時間弱にしか感じられなかったほどの傑作です。

がんで死期が迫りつつあるけど、今は元気な真理さん。そして日常的に人がどのように終わりを迎えるかを考えるマリーによる会話劇は、一言では言い表せないほど深く広いテーマで繰り広げられます。たとえば、彼女らの関係性が一気に深まる深夜の女子会は、『21世紀の経済学』かよ!とツッコミを入れたくなるほど難解な現代経済学を、めちゃ平易なセリフの応酬で構成したり。いや、こういう講義があったら、もっと真面目に大学通いましたよ……レベル。
で、どこがクィアかと申しますと、彼女たちの間柄がたまーにセクシュアルな空気感になるのね。たとえば真理がマリーの足をマッサージするシーンとか、シスターフッドとしてもバディとしても見られるんだけど、すっごい曖昧なグラデーションの中にあるクィアなのかしら、と思う人もゼロではない描写なの。

これは意図してやってるのか偶然なのか、と悶々としまして。で、岡本多緒さんとヴィルジニー・エフィラさんの2人に聞いたところ答えが出ました。グラデーションの中にいるそうです。どう受け止めても構わないけど、少なくとも真理とマリーは興味津々惹かれ合っているし、なんなら魅力的に感じている(けれどストレート)。演じる前は全く感じなかったけど、撮影を終えて監督に惹かれ合っている感情でいいのかどうか確認したそうです(監督はその解釈でOKだったそう)。そもそもクィア自体が明確なカテゴライズを避けるための表現だものねー。
ということで、あたしはこの作品、そして監督の過去作『偶然と想像』を勝手にクィア映画認定しております。皆さんがどうご覧になるか楽しみよ。
◾️急に具合が悪くなる
監督・脚本:濱口竜介
原作:宮野真生子、磯野真穂(晶文社)
出演:ヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒、長塚京三、黒崎煌代 ほか
配給:ビターズ・エンド
公開:6月19日より、Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下ほか全国ロードショー
https://www.bitters.co.jp/soudain/
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96









