祝祭(パレード)の原点にある光と影。映画「熱狂をこえて」が問いかける、対話と包括のダイナミズム。

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム

「まくのうちぃシネマ」第82回目

東京プライドほか、各地で開催されたプライドは楽しんでますか〜? はい、っていう声がたくさん聞こえます(幻聴)。と、こんなあっけらかんと祝祭気分でプライドマンスを楽しんでいられるのは、こういう負の歴史があったから、ってことを思い出させてくれたのが、現在公開中&レインボーリール東京でも上映された『熱狂をこえて』。

いや、あたしはおばあちゃんなので、南定四郎さんの功罪は存じ上げているつもりだったのよ。彼が編集長を務めた『アドン』が他のゲイ雑誌よりもポルノ色薄め(とはいえ墨も薄い)で人権問題に積極的な情報発信源だったこと、日本初のプライドとなった「レズビアン&ゲイパレード」の発起人でありながら、現場で特定の人たちを排除しようとしたこと……などなど。

トピックを聞けばすぐに思い出せるほど、あたしにとっては身近な話だったのね。でも、あれから数十年。時代も価値観も世間の認識も変わって、東京をはじめとする日本のプライド運動も目的がだいぶ変わってきただけに、これは一度総括せねばいかんことなのよね。と、この映画を観て思い出しました。まさに「熱狂をこえて」ようやく語れるようになったっていうのが、歴史の教科書みたいなこの映画。

やっぱね、一人の熱狂だけに頼っちゃあかんし、溺れてもいかんのよ。そもそも十人十色でセクシュアル・マイノリティのカテゴライズだけでははかれないのが人間だし、多様性をうたうのであればあらゆる意見を包括して排除することなく対話していくことが重要じゃない。怒号飛び交い、対立、排除、そしてみな精神的にも肉体的にもすり減る。こんな不健康な状態で、うまくいくわけないってば。

でも南さんの時代……いわばあたしの青春時代はそこまで心広くなかったのよね。と、反省を込めながら観るのがオーバー50世代。それよりもお若い方には、「え、マジでこんなことあった?」という驚きを持ってご覧いただきたいです。そして繰り返しちゃいけないことがなにかを知ってね。

◾️熱狂をこえて
監督:松岡弘明
出演:南定四郎、大塚隆史、小倉東、ブルボンヌ、小川チガ、鈴木賢 ほか
配給:アップリンク
公開:現在、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー中
https://x.com/beyond_t_f0605

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96

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