花結い師とは? TAKAYA氏の独創的なヘッドドレスに込められた想いと、これまでの歩み。

ゲイを隠さない花結師のTAKAYAさん

花を飾る人たち。
その生け方は千差万別であり、それぞれの個性が垣間見られるアート作品であるーー。

TAKAYAさんは即興で髪に花を結い上げ、オンリーワンのヘッドドレスを生み出す「花結い師」なのだ。
今回、10月30日に2年ぶりのライブパフォーマンス「感情の切断」を行う彼に、これまでの人生と、花との出会い、そして花結い師としての活動について話を伺った。

花結師のTAKAYAの作品

――紆余曲折。生き方を模索されてきたとのことですが、どんな風に歩んでこられたのでしょうか?

別にいじめられてはいなかったんですが、小学生の頃から、学校に行けないことが多々ありました。中学校になるとほぼ行けなくなり……高校に進学すると、結局、人とのコミュニケーションが苦手というのがはっきり分かって、2日目に退学しました。

その後、調理師になりたい夢があったので、ケーキ屋で3年修行し次にフレンチのお店にいきました。ですが、そこで壁にぶち当たったんです。家で料理を作るのは楽しいのに、お店で調理をしてるのは楽しくない。なぜかと。それは、これはこうしないといけない、これはこうすることがいいのだという決まり事に、自分の性格上どうも受け入れがたく、結果、辞めることになって。

それから、20歳の時に生まれ育った滋賀県から京都に出てきて、デパ地下でハム売ったりなど色々と食べ物関係のことをやりつつ、ご縁があって24歳の時に、京都の東山にカフェをオープンしました。そこでやっと自分自身、納得いくことができましたね。カフェは順調でした。でもある人から「30歳で成人、40歳で成功」という言葉を聞いて、それが自分の人生設計の指針となり、30歳で違うことをしたいと思うようになったんです。なんとなく、30歳で何かに出会えたら。

ゲイを隠さない花結師のTAKAYAの作品

――料理の道から離れ、花結いを始めようと思ったきっかけを教えてください。

30歳になるちょっと前、女性の頭から花が湧き出るような映像が頭に浮かんだんですね。それを無性に具現化したく、いてもたってもいられなくなり友だちの髪に花をつけさせてもらったんです。そしたらまさに自分の頭に浮かんだものが目の前に広がり、どんどんイメージが膨らんでいったんです。
これだって思いました。30歳になったらこれをやってみようって決心したんです。

振り返ってみると、小学校の時にワインレッドの薔薇の花を育ててたのですが、皆さんはきっと咲くまでを楽しみに育ていると思います。僕はただワインレッドの色を見たいが故だったんです。その深い赤色は自分の琴線にすごく響いていました。また、サーモンピンクで枯れそうな色合いで花も大きく枝垂れたフレンチチューリップを自分の部屋に飾るとパーンと一気に雰囲気が変わったのが分かり、花にはそういう力があるんだなって子ども心に思っていて、それで30歳を前に再び花と出会い、記憶が蘇ったのもやってみようと思った理由でした。
とはいえ、花屋さんになりたい気持ちはなく、花で表現したいという気持ちをどうすべきかと。ただ先人がいないのでまずは知ってもらう活動として、パフォーマンス活動を始めていったんです。

プレーンな髪の状態から、花を結い上げていく過程を見ていただいて花結い作品として完成していく様は、見ていただいた方々には概ね好評でした。
当初、作品を各方面の出版社にも持ち込んだりしていましたが、当然、「誰?」みたいでしたし、まず花結い師というジャンルもカテゴリーも言葉自体もなかったので理解をしていただくのまでが大変でした。ですが、ヘアメイク専門雑誌「SHINBIYO」で取り上げていただいたのを機に、美容師関係の方々に広まり、以後少しずつではありましたが問い合わせがくるようになったんです。

ゲイを隠さない花結師のTAKAYAのヘッドドレス

ーーウェディングのヘッドドレスとしての花結いも注目を集めていますね。

活動を始めて2~3年くらいの頃、友人の結婚式で花結いをやったのが口コミで広がり、新婦のヘッドドレスとしての花結いも引き受けるようになりました。

そんな矢先に桂由美さんとの出会いがあったんです。
依頼してくださった方の結婚式にサプライズでお越しになられ、僕が花結いした新婦の姿を見て興味を持っていただいたことをきっかけに、ショウのお手伝いをすることになったんです。
ウェディング界トップの方とご一緒できることはすごく光栄だし、何よりも表現者としてもとても刺激をいただく機会となりました。

女性の夢を叶えるという点では、桂由美さんのドレスも僕が結い上げる花結いも、同じ想いが込もっています。ですので、毎回新鮮な気持ちで喜んでいただける作品づくりを心がけるようにしていますね。それに、ウェディングでの花結いも10年以上やっていると、「TAKAYAさんに花結いをしてもらうのが夢でした」と言ってくださる方も増えてきて、僕自身も幸せな気持ちになるんです。

――活動を始めてから17年。最初の頃と今では制作に変化や違いは出てきたのでしょうか?

初期の頃からすると随分と作風も変わってきたと思いますが、実はアップデートしながらも原点の頃のテクニックに戻ったりもしていて、行ったり来たりしている感じです。

また、こういうものにしたいというイメージ画や設計図などは前々から一切描かなかったんです。元々決められごとが苦手なので台本があるとできなくて。「あくまでも即興でやる」その方が力が発揮できるし、花が届かないなどのトラブルが起こった時にでも即座に対応できるという強みはあって。

なので、志に関しては初期とそれほど変わってはいないですね。

――「40歳で成功」と人生設計に組み込んでいましたが、実際はいかがですか?

成功はどうなんでしょ(笑)。でも40歳になって自分は死んでしまうんじゃないだろうかっていう恐怖心はあったんです。そういうのありませんか? 別に確実に病気でとかそういうものではなく、おぼろげに「死」というものに向き合うような気持ち。
その恐怖心をなんとか和らげたい。それを作品としてできないかなと思って始まったのが写真での「遺影」シリーズでした。

それまで自分の中のブランディングとして、ウェディングは別として、一般の方を作品に登場させることはしてなかったんですね。でもこのシリーズでは遺影として、花結いした一般の方を出すようになりました。40過ぎても自分は死ななかったけれど、その作品があることによって「死」に対して向き合うのではなく、ふと立ち止まるというのかな、さらに参加していただいた方の死に対するお話を、遺影を撮った気持ちなどを聞くと、死生観というものにバリエーションを持つことが、僕自身できてきたような気がします。
作品自体も最初はいかにも遺影と言った表情だったのが年を経て作ると笑顔になってるものが多くなったり……。この作品はこれからも続けていきたいと思っています。

――TAKAYAさんは作品に何かしら自身のセクシュアリティとなるものを反映されてるのでしょうか?

ゲイかと聞かれれば「そうです」と言いますが、自分からは別に話さなくてもいいとは思っています。
ずっとノホホンと生きてきたのでゲイはこうあるべき、ゲイの権利とかに対しての熱量は低いかもしれないです。これまでも淡々としてきたし、これからも淡々としている、そういうスタンスで生きていくと思いますね。

だから作品やパフォーマンスにあえて自分のセクシュアリティを絡ませることはあまりないですね。
ですが最近、ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさんをモデルにして花結いのコラボ作品を作ったんですが、本当に面白かったし、いつもの雰囲気じゃない作品が撮れたことはすごく刺激になりました。ドラァグクイーンシリーズはこれからもやっていきたいなと新たな目標ができましたね。

――10月30日(土)に開催されるライブパフォーマンスへの意気込みを教えてください。

今回のイベントは、平安神宮近くにある「金戒光明寺」の庭にマネキンを置き、借景の中、パフォーマンスをさせてもらうことになりました。ゲストには歌舞伎の附け打ち師・山﨑徹さんをお迎えして、ライブ中に即興で附け打ちをしてもらいます。

附け打ちって、芝居、舞踊の中でその登場人物の動作などを附け板の上で附け木を打ち叩くことによって強調させるために使われる演出なのですが、ずっと共演したくて念願叶ったという感じです。今回は野外ですし、モデルはマネキンですし、コロナ禍においては最適な演出だと思いますので、ぜひお越しいただけたら幸いです。

また、初めての動画配信もやるので、日本全国・海外のたくさんの方にも観ていただき、「花結い師」というものを広く知っていただけたらと。

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◆ 花結い師 TAKAYA LivePerformance
感情の切断
2021年10月30日(土)
晴天の場合:開場15:00 開演15:30
雨天の場合:開場17:00 開演17:30
会場:浄土宗大本山 くろ谷 金戒光明寺(京都府京都市左京区黒谷町121)
※公演チケット、ライブ配信チケットの購入が必要になります。詳細は公式サイトをご確認ください。
http://blog.takaya-hanayuishi.jp/

取材・インタビュー/仲谷暢之
記事制作/newTOKYO