映画ライターのよしひろまさみちが、今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム「まくのうちぃシネマ」。
6本目となる今回ご紹介するのは『コンテイジョン』。新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大する中、落ち着いた対応こそ必要だと説いてくれるから、#おうち時間 の有効活用としてぜひ観てほしい作品。キャッチコピーの「【恐怖】は、ウィルスより早く感染する」、これとってもリアルよ!
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21世紀に入って20年経ったのに、今が世紀末って感じ……。昭和のババアはそう思ってしまう今日この頃。不安しかなくて、やけっぱちになる気持ちも分かるんだけど、ここはとにかく落ち着いて。で、落ち着いて観ていただけたら、この状況を乗り切るためのヒントがたくさん見つけられる作品があるんですよ。しかも、家で観られる作品で。それが未知感染症パニック映画の傑作『コンテイジョン』。フィクション映画ですので、これと同じことが起きる、これが正解、というわけじゃないことを心にとめておいてください。もちろん不安をあおるつもりもありませんので、とにかく冷静に。
これ、公開時は開映10分以内に死ぬグウィネス・パルトロウの無駄遣いを笑うのみだったんだけど、もはやひとごとと言えない状況なので、今のあたしたちが観るべきポイントをまずは。
1:ウイルスがどうやって感染するか
2:集団パニックが起きるときのきっかけ
3:未知のウイルスがどうやって生まれるか
この3つだけを注視しましょう。
まず今回は1を解説。
ウイルスは今回のCOVID-19だけじゃありませんよね。人を宿主とするもので有名なのはインフルエンザウイルスだけど、ほ乳類や鳥類を宿主とするものだけでも約650種。しかも、一つの種に数十から100以上のタイプがあり、個体差は無限大。人間は一生のうちに数百回はなんらかのウイルスに感染し、それが風邪などの症状として出るか、もしくはまったく症状がでないか、で気づかぬうちに共生しているそうな。重症化するのはごく一部で、劇中に出てくる新種ウイルスはきわめて致死性が高いというドラマチックな演出です。
で、それがどうやって感染するのか、というのが、冒頭のシーンから描かれています。クレジットカード、エレベーターのボタンなどなど、感染してしまった人の手が触れたところから他の人に感染する、ということが一瞬で描かれてるんですね(ほんと一瞬。なので、繰り返し観て)。
最近「手洗いを!」とさんざん言われているのは、コレのこと。劇中にも、「人は一日に数千回、顔を触るので」と言うセリフがあるんだけど、無意識のうちに粘膜の関節接触してる可能性が高いわけで。しかも、ウイルスは細菌よりも小さいものだから、人の目と判断では全く動きがわからないわけです。だから、手は洗え。まずは手。
この作品は、SARSパニックの後に製作されたので、描かれる感染症のモデルはSARS。SARSといえば、あのパニックを経験した香港や台湾などのアジア諸地域の今回の対応ですね。今回の騒動では群を抜いて早かったのは、感染がどう広がるかを理解していたからなんですねー。
ちょっとお堅い内容で申し訳ないんですが、『コンテイジョン』ネタはあと2回続けます。何度でも言いますが、フィクション映画だから、この映画と同じことが起きるわけではない(けど、きわめて近いところまではきているから注意喚起)、ということだけ念押ししときます。
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映画:コンテイジョン
ストーリー/香港出張からミネアポリスに戻ったベスは、旅先でひいた風邪が悪化し急死。それはただの風邪ではなく、未知のウイルスによる感染症と分かり、CDCが動き始めるのだが……。
監督/スティーブン・ソダーバーグ
出演/マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ ほか
DVD・Blu-ray販売・発売/ワーナー・ホーム・ビデオ
配信/Netflix、YouTubeムービー、Googleプレイ
文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96