ゲイが家族を持つドキュメンタリー。「二十歳の息子」と「愛と法」で考える血縁以外の家族を持つ“価値観”って?

映画ライターのよしひろまさみちの映画レビュー

映画ライターのよしひろまさみちが、
今だからこそ観て欲しい映画をご紹介するコラム

「まくのうちぃシネマ」第43回目

4月末〜GWは「東京レインボープライド2023」&プライドウィークですもんで、いつもよりちょっとだけ真面目に参りましょう。ということで、今回は2作ご紹介。どっちもドキュメンタリー。そしてどっちもゲイが家族を持つお話について。

よしひろまさみちの「二十歳の息子」の映画レビュー

まずは『二十歳の息子』。
自立支援団体で働く網谷さんが、施設で育ち20歳になる渉くんを養子に迎えてからの数年を追ったドキュメンタリー。あたし、すっかり勘違いしましたのよ……。養子縁組=ゲイの結婚=やったー、おめでとう! な話かと思いこんで観たら、全く違う。本当にごめんなさい。そもそも養子縁組を婚姻代わりに使うってコト自体が不平等だし、おかしなことなのよね。そこにも気づかせてくれてありがとうございます。

で、この作品。見る人それぞれが、ここに映し出されるさまざまな問題にどうアプローチするかを考えてもらいたい映画になってます。強いて言うなら、問題ごとがあったとしても事なかれ主義に陥らないでほしい、ということが最大のテーマ。

網谷さん父子がそれぞれ抱える思いや課題はもちろんだけど、彼らを取り巻く環境にもすごいもんがわんさか。でも、それらをことさらにピックアップするでなく、淡々と映しているもんだから、映画慣れしてない人だと「え、これ何が言いたいの?」って思っちゃうかもしれません。
ノンノン、そもそも家族に一定の答えは存在しないのよ。それに気づけば、見る人それぞれの着目点や課題が見えてくるはずです。にしても、すげーわ網谷さん……。ほんと尊敬します。

よしひろまさみちの「二十歳の息子」の映画レビュー

もう一作は6年前に公開されて、今もなお上映会で全国巡業している『愛と法』。
ゲイの弁護士カップル(というか夫夫)を中心にお仕事を追いつつ、彼らが居場所のなかった18歳の青年を迎え入れるお話。こちらはかなり明確にテーマと問題点が浮き彫りになっているし、主軸になるお二人……南さんと吉田さんのかけあいが意図せずコミカルなので(失礼)、初めてでも安心。

曲がったことは大嫌いだけど、対立はしたくなーい。じゃ、みんながやさしい気持ちで生きるためには? みたいなことを考えたことがある人は、これを観たらガツーンとやられます。

やっぱね、ステレオタイプに陥らないためには結局は闘わないとあかんのよ。ただ、その戦い方には知恵と対話する勇気、ユーモアが必要ってことを教えてくれるの。居候を迎えた新生活あたりからは、ゲイが血縁以外の家族を持つ“価値観”に迫るのも良き〜。

いずれも観られるチャンスはそれほど長くなく、広くもないので、機会があったら即チェックよ。必ず、良い気づきになるから見てほしいわ!!

二十歳の息子
監督:島田隆一
出演:網谷勇気、網谷渉 ほか
配給:ブライトホース・フィルム
公開:現在、ポレポレ東中野、名古屋シネマテークほか全国順次公開中
https://the-new-tokyo.com/hatachi/

愛と法
監督:戸田ひかる
出演:南和行、吉田昌史 ほか
配給:東風
公開:全国で上映会を随時開催中(2023年4月8日、北海道河東郡音更町 音更町文化センター ふれあいホールにて)※詳細は公式サイト、公式SNSアカウントにて

文/よしひろまさみち Twitter@hannysroom
イラスト/野原くろ Twitter@nohara96


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